ECや通販の商品説明では、商品数が増えるほど、文章を書く時間だけでなく、仕様変更への追従、表記の統一、公開前の確認にも手間がかかります。「毎回似た文章になる」「説明と元データの違いを見つけにくい」「確認に追われて企画や販促へ時間を戻せない」と感じる担当者もいるでしょう。

生成AIは、この作業をすべて自動化する道具ではありません。商品情報をもとに下書きを作る補助役として使い、事実確認と公開判断は人が担うことが基本です。この記事では、EC・通販担当者が小さく試し、誤情報や誇張を防ぎながら継続可否を判断するための実務手順を整理します。

商品説明作成で起きる困りごと

商品説明の作業は、文章作成だけでは終わりません。商品名、型番、サイズ、素材、価格、在庫などの情報を集め、必須表記を入れ、禁止表現を避け、ECサイトへ登録するまでが一連の仕事です。元データが複数の表や担当者に分かれていると、古い仕様の混入や転記ミスも起きやすくなります。

先に見直したいのは、文章の書き方より情報の流れです。何を正しい元データとするか、誰が確認し、誰が公開を承認するかを決めないままAIを加えると、確認対象が増えて手戻りにつながることがあります。

AIにできること、任せないこと

AIに任せやすいのは、整理済みの商品情報を指定の順序で文章にすること、文体を整えること、見出しや説明文の候補を出すことです。同じ形式の商品が続く場合は、テンプレートに沿った下書き作成にも使えます。

一方、AIには、元データが正しいか、表示に必要な根拠がそろっているか、法令や業界ルールに適合するか、他者の権利を侵害しないかを最終判断させません。入力されていない機能や効果を補わせず、不明な項目は「不明」として返すよう指示します。AIの得意・不得意を業務別に整理したい場合は、AIにできること・できないこと|中小企業の判断基準も参考にしてください。

開始前に商品データ、禁止表現、責任者を決める

最初に、商品説明の根拠となるデータを一つに寄せます。少なくとも、商品名、型番、サイズ、素材、色、価格、在庫、仕様、注意事項、必須表記、更新日、情報の管理者を確認できるようにします。価格や在庫を別システムで管理している場合は、商品説明へ固定表示するのか、販売画面の最新値を参照させるのかも決めておきます。

次に、「必ず記載する項目」「根拠がある場合だけ使える表現」「使用しない表現」を一覧化します。公開承認者と、法令・権利・安全性について確認先となる担当者も明記します。個人情報、取引先の非公開情報、発売前情報などを外部のAIサービスへ入力してよいかは、社内規程と利用サービスの条件を先に確認してください。入力情報の整理には、生成AIに業務情報を入力する前の確認チェックリストも利用できます。

AI担当と人担当の確認表

工程AIに任せる範囲人が確認・判断すること
商品情報の準備入力された項目の並べ替え、形式の統一案商品名、型番、サイズ、素材、価格、在庫、仕様の正しさ
下書き指定テンプレートに沿った文章案、言い回しの候補入力にない事実・効果・比較表現が加わっていないか
表示確認禁止語や必須項目の機械的な候補抽出景品表示法、薬機法が関係し得る表現、業界ルール、権利、機密情報
校正表記ゆれ、誤字、読みやすさの修正候補元データとの差分、意味の変化、購入判断に必要な情報
公開公開判断は任せない責任者による最終承認、登録内容、承認ログの保存

この分担表は、使うAIサービスや商品カテゴリに合わせて調整します。ただし、公開前の最終承認と、その判断根拠を確認できる状態は残します。

低リスクの商品から少量で試す

試行対象は件数で固定せず、担当者が一件ずつ元データと照合できる少量に絞ります。仕様が整理され、効果や安全性の表現を必要とせず、自社で事実確認しやすい商品から始めると、確認工程の不足を見つけやすくなります。

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器など、広告表現に個別の規制が関係する商品は、一般商品と同じ試行枠へ入れません。健康食品なども表現内容によって確認すべき法令や制度が異なり得るため、対象品目と確認手順を自己判断で簡略化せず、必要に応じて社内の責任者や専門家へ確認します。

商品情報整理から登録までの流れ

  1. 商品情報を整理する:正本となる商品データと更新日を確認し、不明項目を分けます。
  2. テンプレートを決める:記載順、必須項目、文字量、文体、禁止表現を定義します。
  3. 下書きを作る:整理済みの情報だけを渡し、不明な内容を推測で補わないよう指示します。
  4. 元データとの差分を確認する:数値、単位、型番、固有名詞、効果・性能の表現を中心に照合します。
  5. 表現と権利を確認する:誇張、比較、最上級、第三者の文章・画像、法令上の必須表示を確認します。
  6. 人が承認する:承認者、承認日時、対象原稿を記録します。修正後は再承認の要否も決めます。
  7. ECサイトへ登録する:登録画面でも価格、在庫、画像、選択肢、リンクを確認してから公開します。

公開前チェック

  • 商品名、型番、サイズ、素材、色、数量、単位が元データと一致している
  • 価格、在庫、送料、返品条件などの取引条件が販売画面と矛盾していない
  • 入力にない機能、用途、効果、保証、比較結果を追加していない
  • 必須表記があり、禁止表現や根拠を示せない最上級・効果表現がない
  • 第三者の文章・画像・商標を無断で使っていない
  • 個人情報、取引先の非公開情報、社外秘情報が残っていない
  • 担当者が実際の公開画面を確認し、承認ログを残している

誤情報、誇張、法令、権利、機密情報を確認する

生成AIの文章が自然でも、内容が正しいとは限りません。OpenAIの安全に関する公式資料でも、実務利用前に人が出力を確認し、確認に必要な元情報へアクセスできる状態が推奨されています。商品説明では、AI出力と商品仕様を並べて確認できるようにします。

景品表示法では、商品・サービスの内容や取引条件について、実際より著しく優良または有利だと一般消費者に誤認される表示が禁止されています。効果・性能を表示する場合は、合理的な根拠を確認し、販売価格、送料、返品条件などは正確かつ明瞭に示す必要があります。

また、薬機法では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の名称、効能、効果、性能などに関する虚偽・誇大な広告が禁止されています。対象商品や広告該当性、許容される表現に判断が必要な場合は、AIの提案だけで決めず、最新の公式情報と社内の責任者、必要に応じて専門家へ確認してください。

法令確認とは別に、メーカーや競合サイトの文章をそのまま流用していないか、利用許諾のない画像やレビューを使っていないかも確認します。入力データに機密情報が含まれる場合は、使用するサービスの保存・学習・共有設定だけに頼らず、自社の情報管理ルールに従って取り扱います。

実測して継続・拡大を判断する

試行後は、「AIを使ったから効率化できた」と決めつけず、商品情報の準備から登録までにかかった時間、修正回数、誤表記、差し戻し、問い合わせやクレームを記録します。クリック率や購入率を見る場合も、価格、在庫、広告、季節など他の条件が違うことを踏まえて比較します。

継続判断では、AIツールの利用料だけでなく、データ整理、テンプレート作成、確認、教育、修正にかかる時間を含めた総コストで考えます。作業時間を減らせた場合は、その時間を商品企画、仕入れ、顧客対応、販売促進など、担当者が本来取り組みたい業務へ戻せたかも確認します。ミスや確認負担が増えた場合は、対象範囲を広げず、元データや手順を見直します。

相談するときに整理しておきたいこと

外部へ相談する場合は、対象商品の種類、現在の商品データ、説明文の作成件数、公開前の確認者、困っている工程を整理しておくと、必要な支援範囲を判断しやすくなります。すべての自動化を前提にせず、データ整理、テンプレート作成、確認体制のどこから整えるかを検討しましょう。

商品説明への生成AI導入や、公開前の確認体制づくりで迷っている場合は、アナデジラボへご相談ください。